政令指定都市の魅力

昨日、夕刻から隣接自治体の政令市に関するフォーラムを拝聴に出かけた。

隣の自治体とはいえ、実はほとんどいったことが無い。大きな総合体育館に圧倒されながら政令市を考える関係者の話に聞き入ってきた。


実は、拙自治体は平成の大合併時期に「乗り遅れた」。
一見豊かに見えるインフラや企業立地、あるいは人口増加によってそうした選択をしなかった。
その時の政治的、行政的、そして民意の雰囲気はやはりそういう結果をもたらすには十分なものだったのだろうが、当然時間は進む。
その時から数年が経ち、その当時の雰囲気とは異なる、地域に対する考えかたが遅々としてではあるが広がりつつある。

そうした雰囲気のなかで、隣接自治体が、合併=政令市を前提とせず(という建前)建設的に政令市になる場合の諸課題や些細な懸念を話しあおうと前向きなのに対して、拙自治体は、「全く」無関心である。驚くことに、かけらもそうした機運がない。

昨日のフォーラムは、やや合併と政令市が前提となった議論だったように感じたが、それはその地域のまさに今の思いが顕在化しただけであるのだろう。むしろ、そうした意識を多くの住民が共有出来た場であり、かつ学識者やあるいは首長が政令市に乗り気であるところをまざまざと見せつけられ、「ああ合併するんだろうな」という漠然とした気持ちを住民の間に醸成しようとする空気として肌で感じるには十分で、企画した主催者の意図に叶って、大きな効果があったと思う。つまり、合併推進に傾く住民にとっては「大成功」といえるものだっただろう。
ちなみに、5年前の同様のフォーラムでは、ヤジと罵声が跳ぶ反対だらけの会場だったそうである。
時間と情報は人を変えるのだ、当たり前だが。

そのフォーラムの席上、小さな自治体の側の首長がこう述べた。
「地域の方にとって合併がいいのか悪いのかではなく、将来のことを真剣に考える場として合併を考えていきたい。もちろんそのための情報は惜しみなく提供する。合併してすぐに地域が活性化したりすることはない。しかし、長い目で地域を見たときに、今決断するのか、後々で後悔するのかそれはわからないが、一生懸命考えるときにみんなで考えるのは悪いことではない。」
こうしたある意味正直(にみえる)な意見表明は、地域の住民にとっても、また合併の当事者であるもう一方の自治体関係者にとっても大変良い印象を与えただろう。

面前の利益や効果だけに縛られないマクロな地域的立ち位置を模索しようと提案されていた首長の意見は、政令市を考える機会を与えるという意味で、住民にとっても良い「きっかけ」を付与したと思う。
一方で、当然、地域のミクロな環境整備等も必要であり、そうした事が、実は住民にとっては一番優先してほしい事なのである、ということは行政側も理解しなければならないことだろう(道路の整備とか、小さなコミュニティの活性化とか、役所が遠くなるとか)。

ただ、そうした小さな多くの思いを超えて、地域の将来を「デザイン」するという作業に、地域のステークホルダーが多く参加することこそ、こうしたフォーラムの意義であろうし、地域の将来を描くための重要な過程であるだろう。

自治体が後ろ向きなのに比べて、極めて前向きであったのは、自治体職員としてうらやましいのと同時に、少々の寂しさも感じた2月の夜だった。

政令市の魅力は、もちろんトレードオフ的要素もあるものの、そこに住民と行政が一緒になって考える場があること、そうした機会そのものが政令市になっていくために生じる魅力であろう。
なにかのきっかけがないと、意外に地域のことなどは無関心だからだ。


そして、フォーラム終了後、職場の先輩と地域のことについて居酒屋で多いに語りあったのだった・・・